学習指導要領解説の公表で感じたこと。

 去年の12月25日に高等学校の学習指導要領の解説(英語、国語、地歴、公民)が公表された。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/1282000.htm

 新聞報道では、地歴で竹島の明言を避けたことばかりが話題にぼっていたが、違和感を感じた。

 教科書は不思議なもので、使う人と買う人、そして選ぶ人がそれぞれ違う。小学校や中学校では教育委員会が選び、国の予算で提供され、生徒が使う。高等学校では学校が選び、学校の予算で買い(元をたどれば親が支払う学費だけれど)、生徒が使う。

 ある方面は「偏向的な内容」だといい、またある方面は「事実を歪曲したもの」といい、またある方面は「事実を誇張している」といい、またある方面は「大事な事実に触れていない」という。

 それぞれさまざまな意見が出るのは良いのだが、ちょっと待ってほしい。

 使うのは生徒なのだ。学校でも、親でも、メディアでも、研究者でも、活動家でもない。

 先日の記事にも書いたが「教科書的な歴史は面白くない、物語がない。だから司馬史観的な歴史小説に人気が出るのだ」と小島毅氏はいう。また、先日のJMM村上龍氏が以下のような記事を書いていた(以下引用)。

知り合いから聞いた話ですが、「TVゲームは面白いものがたくさんあるのに、どうして教科書はつまらないのだろう」と真剣にその理由を考えた中学生がいたそうです。たいていの大人は、教科書が面白くないのは当たり前だと、そもそも疑問を持つことがないかも知れません。ただ、その中学生は必死で考え、ついに自分なりの解答を得ました。

 「TVゲームを作っている人たちは何とか面白くしようと必死で考えているが、教科書を作っている人たちは面白くしようとまったく考えてない」というのが彼が得た解答で、「その証拠に、教科書検定で『面白さ』が問われることはないようだ」という補足説明もあったそうです。わたしも、教科書を読んでワクワクした記憶はありません。たいていの子どもは好きな学科を持っていますが、「教科書を読んでその学科が好きになった」ということはほとんどないのではないかと思います。

 教科書を興味深いものにするというのはとても大切ですが、ものすごくむずかしいことです。ただ、多くの生徒が「興味を持ちワクワクしながら」読むような教科書が作られたら、たぶん授業はとてもやりやすいのではないでしょうか。90年代から続いてきた「ゆとり教育」が終わり、その功罪がいろいろと言われ、教育のあり方は論議され続けていますが、子どもが興味を持ってワクワクしながら読めるような教科書を作ろうという指摘はほとんど見ることがありません。

http://ryumurakami.jmm.co.jp/より。

 なんか身につまされる話である。